片付けのご依頼をいただく方の多くは、「とにかく今の状況を何とかしたい」という気持ちで、相談して来られます。
しかし実は、片付けは「始まり」であって、片付けが終わったあとの“その後”にこそ、本当の変化が待っています。
今回は、実際のご依頼作業で私たちが体験したなかから、依頼者様の「変化」に着目して、いくつかの例をご紹介いたします。
現場で見てきた私たちだからこそ知っている「片付けの先にある明るい変化」です。
「自分の部屋が好きになった」
作業終了後、部屋を見て思わず笑顔になった方が、こんなふうにおっしゃっていました。
「これまでは、帰ってくるたびに気が重くなっていたのに、今は自分の部屋がすごく落ち着くんです」
散らかった部屋をずっと見ていると、それだけで気分が下がってしまうこともあります。
でも、きちんと片付いた部屋には、自然と気持ちを前向きにする力があるんですね。
あるお客様は、長年足の踏み場もないほどモノに溢れた部屋で過ごされていました。
片付けが終わり、すっきりと広くなった部屋を見て、思わず「こんなに広い部屋だったんだ…!」と驚いておられました。
それからは、部屋で過ごす時間が増え、読書をしたり、趣味を楽しんだりと、ご自身の時間を大切にされるようになりました。
途中から、自分でも片付けに参加しはじめる方も
片付け作業が1日で終わらず、数日にわたることもあります。
そんなとき、初日はただ黙って私たちの作業を見守っていた依頼者さまが、次第に「これ、自分で分別してみます」と手を動かし始める――そんな場面に何度も立ち会ってきました。
ある方は、長年ため込んでしまったモノを前に、「正直、もう自分では無理だと思っていました」と作業前に話されていました。
けれど作業が進むにつれ、「あ、これ、まだ使えるかも」「これはもういいですね」と、ひとつひとつに目を通しながら、ご自身でゴミ袋に手を伸ばすように。
作業2日目には、なんと朝からすでに何袋かまとめておられ、「昨日見てたら、なんだか自分でもやりたくなって…」と少し照れくさそうに笑っておられたのが印象的でした。
また別の方は、「自分で片付けないと意味がない気がして」と、タンスの引き出しの中から丁寧に思い出の品を取り出しながら、手放す、とっておく、などと仕分けを始められました。
「業者に任せる」つもりで依頼されているわけですが、実際に片付けが進むのを見て、お気持ちが変わっていくことがあるのです。
ご自身の人間としての力を取り戻すといますか、そんなふうに思えて、私たちも嬉しくなります。
「人を家に呼べるようになったのが、いちばん嬉しい」
「ずっと、自分の家には誰も来ないように、来ないようにと気を使ってたんです」
そう打ち明けてくださったのは、ある男性の依頼者さまでした。
ご家族、友人、また恋人にまで、なんとか理由をつけては来訪を断っていたそうです。
決して人付き合いが嫌だったわけではありません。、「こんな状態の部屋を見せたくない」という理由でした。
でも、片付けが終わってすっかりきれいになった部屋を見渡しながら、
「これでやっと、人を呼べます。誰かに“うち来る?”って言えるのが、なんだか新鮮でうれしくて」
とおっしゃっていました。お部屋が片付くと同時に心まで晴れやかになられたようでした。
この方のほかにも、「部屋にちょっとした観葉植物でも置いてみようかな」と、部屋での時間を“楽しむ”ことに目を向けはじめている方もいらっしゃいました。
片付けは、単に空間を整えるだけでなく、「人とつながる楽しみ」や「これからの暮らしを考える余白」まで取り戻してくれるのだと、改めて実感する瞬間でした。
「もう同じことは繰り返さないと決めました」
ご相談いただいた時は、「とにかくゴミを全部なくしてくれればそれでいい」とおっしゃっていた方がいました。
ゴミ屋敷状態で長く生活していると、感覚がまひしてしまい、そこから先の生活が想像できなくなることがあります。
けれど、実際に作業が始まり、部屋の空間が少しずつ見えてくると、依頼者さまの様子にも少しずつ変化が見え始めました。
作業終盤、ふいに「ちょっとゴミ袋を買いに行ってきます」といって、コンビニに買い出しに行かれました。
「今回はもう、絶対に元に戻らないようにしようと思って。常にゴミ袋を置いておけば、すぐに捨てられますから」と、どこか晴れやかな表情で語ってくださったその姿は、依頼当初の“どこか諦めたような雰囲気”とはまったく別人のようでした。
片付けをきっかけに、「モノを処分する」だけでなく、「自分の暮らしを自分で立て直す」という前向きな気持ちが芽生えていく。
私たち作業員は、その変化の瞬間をそばで目にするたびに、片付けの本当の価値は“その後”にあるのだと実感させられます。
「片付け」は、暮らしを取り戻す第一歩
モノを減らし、空間を整えることは、単に「見た目をきれいにする」だけではありません。
その人の心に余白を生み出し、人との関係や毎日の過ごし方を、少しずつ良い方向へと変えていく力があります。
私たちは、ただゴミを運び出すのではなく、「そこからの新しい暮らし」に寄り添う存在でありたいと思っています。
もし今、片付けに踏み出せず悩んでいる方がいたら──
片付けた先にある“変化”を、少しだけ想像してみてください。
きっと、その「新しい自分」「新しい人生」を、ご自分でも気に入っていただけるのではないかと思うのです。